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【第17回】 固定資産(1)「固定資産の取得」「減価償却(直接法)」

じっくり簿記 3級
【第17回】固定資産(1) 「固定資産の取得」「減価償却(直接法)」





こんにちは。たいちろうです。

簿記3級講座も後半戦です。

本講座の序盤で、内容が理解できずに飛ばしてしまった部分や、あまり理解できなかった部分を読み返すと、
今なら簡単に理解できるくらいにはなっているかと思います。

効率よく学ぶために、難しそうと思ったら仕訳だけ覚えて流し読みする、ということをオススメします。
今わからなくても、いつかわかる瞬間が必ず来ます。
本当に理解するのはその時までとっておいて、とりあえずは試験に合格するために仕訳だけ覚えてしまいましょう。



今回は、会社で使用する建物や設備、車両などの「固定資産」について説明いたします。
固定資産自体の処理は難しくはありませんが、後に述べる、固定資産の「減価償却」は簿記の中でも特殊な処理になる上、ほぼ必ず試験に出題される重要な論点になるので、しっかりと理解して頂きたいと思います。

固定資産とは
固定資産とは、建物や設備、車両、土地など、会社で長期間使用する資産のことを指します。
簿記上は種類ごとに、「建物」「工具器具備品」「車両運搬具」「土地」などの科目で計上します。

固定資産の取得
固定資産はその名の通り、資産なので増加したら借方、減少したら貸方に記入します。

固定資産の増加の仕訳(建物の場合)
(借方) 建物 ×× / (貸方)・・・・

固定資産の減少の仕訳(建物の場合)
(借方)・・・・/(貸方)建物 ××

また、有価証券と同様に、取得する際にかかる付随費用も固定資産に加えることになります。


例題17-1 会社で使用するため、建物を900万円で購入し、購入にかかる諸費用100万円と共に、小切手を振り出して支払った。


例題17-1 解答 (借方)建物 1,000 / (貸方) 当座預金 1,000 (単位:万円)


建物を購入しているので借方に建物、代金は小切手なので貸方に当座預金となります。
金額は建物自体が900万円、付随費用が100万円なので、合計1000万円を建物の取得減価として計上します。


以下、本問のBSです。(現金、預金は省略しています)



減価償却とは
建物などの固定資産には、(税法上)使用できるとされている年数(耐用年数)が決まっています。

例えば、鉄筋コンクリート造の建物であれば47年、木造の建物であれば22年です。
その限界の年数が経過したら価値はなくなると考えられています。

すなわち、固定資産は時間が経過するにつれて価値が徐々に減少していく、と考えられています。
なので、価値の減少を反映させるため、固定資産の価値の減少分を費用として計上するのが減価償却(げんかしょうきゃく)です。

例えば下の図のように、1,000万円で購入したものが1年経過して、その価値が900万円になっているとします。その価値が下がった100万円分を、費用として計上することが減価償却なのです。




そして、固定資産の価値の減少分として計上する費用は「減価償却費」という科目を使用します。
(ただし、「土地」については建物や車両とは違い、時間の経過で劣化する、価値が下がるということはないため、保有している限り永久に使用できます。そのため「土地」は減価償却しません)

減価償却費は費用であるため、発生したら仕訳の借方に記入します。

減価償却費の発生の仕訳
(借方)減価償却費 /(貸方)・・・・

減価償却の金額の算定方法
固定資産には使用できる年数、すなわち「耐用年数」があります。

簿記3級では、減価償却費は取得原価を耐用年数で割った金額を毎年計上していくという「定額法」が採用されています。

例えば、取得原価500万円の備品について、耐用年数が5年であった場合、

500万円÷5年=100万円

すなわち、1年あたり100万円、備品の価値を減らし、減価償却費を計上するということになります。(下図を参考)




このように、毎年同じ金額、つまり定額で減価償却費を計上するため、「定額法」という呼び名になっています。


上の例の場合、価値が0円になるまで減価償却をしていますが、0円になるまで減価償却できない場合もあります。

すなわち、耐用年数の限度が到来しても、まだ価値があるとみなされている部分は減価償却をしません。
その部分を「残存価額」といいます。
例えば建物について、耐用年数が過ぎても、解体してなくならない限り実際にその建物はまだ使用可能です。そういったことを考慮し、耐用年数が過ぎても、そのものが存在する限りはある程度の価値は残っているという考えが残存価額です。


上記の例と同じく、取得原価500万円で耐用年数5年の備品について、今度は残存価額が100万円あると想定します。
すると、償却できる金額は

500万円-100万円=400万円

となります。
そして、毎年の減価償却の金額は

400万円÷5年=80万円(年間の減価償却費)

となります。
以下、残存価額が100万円ある場合の減価償却のイメージ図です。




毎年80万円づつ減価償却していき、耐用年数が到来した5年後に、残存価額100万円分ぴったりが残ることになります。


減価償却の仕訳方法(直接法)
減価償却の表記の方法について、「直接法」「間接法」の2通りがあります。それぞれ、仕訳の方法も変わってきます。今回は「直接法」について説明いたします。

直接法とは、減価償却費の計上とともに、固定資産を直接減少させる(固定資産を貸方に記入する)方法です。
仕訳としては 

(借方)減価償却費 ×× / (貸方) 建物 ××          (建物の場合)

となります。

建物自体の金額を毎年減らしていく方法であり、後述する「間接法」よりもシンプルな方法です。

直接法の場合、BSを見たときに、その固定資産の簿価(=簿記上の価値。減価償却をした後に残っている価値の金額)が一目でわかるという利点があります。



例題17-2 今期首に1,000万円で購入した建物(残存価額:取得原価の10%、耐用年数10年)について、今年度分の減価償却を行う。(直接法にて処理すること)


例題17-2 解答 (借方)減価償却費 90 / (貸方) 建物 90 (単位:万円)


まず減価償却費の金額を計算します。
この建物の残存価額は

1,000万円×10%=100万円

となります。

よって、減価償却できる部分は

1,000万円-100万円=900万円

となります。

この900万円を耐用年数10年で償却していく、ということになるので、

900万円÷10年=90万円

が毎年の減価償却費になります。

本問の減価償却のイメージは以下の通りになります。(5年後以降は省略しています)




仕訳の借方に減価償却費 90万円を記入します。
そして、その貸方には、(「直接法」による仕訳を求められているので)、建物を記入します。

よって、この仕訳で建物の簿価が90万円減少したと同時に、90万円分の費用を計上したということが反映されることになります。

本問のBS、PLは以下の通りになります。(例題17-1から続いていると仮定しています)

仕訳を反映させる前のBS(例題17-1の解答のBS)


建物の取得原価1,000万円がBSに計上されています。

仕訳を反映させた後のBS



減価償却により、建物が90万円減少し、910万円になっています。
         
仕訳を反映させた後のPL



減価償却費90万円がPLに計上されます。建物の価値が90万円減少し、その分費用が計上された、という流れが見えると思います。



練習問題17-1 今期首に、会社で使用する車を400万円で購入し、購入にかかる諸費用50万円と共に、小切手を振り出して支払った。(科目:車両運搬具)


練習問題17-2 今期首に諸費用込み450万円で購入した建物(残存価額:取得原価の10%、耐用年数5年)について、今年度分の減価償却を行う。(直接法にて処理すること)

練習問題17-1 解答 (借方)車両運搬具 450 / (貸方) 当座預金 450 (単位:万円)
練習問題17-2 解答 (借方)減価償却費 81 / (貸方) 車両運搬具 81    (単位:万円)


練習問題17-1について、車の代金400万円と諸費用50万円合わせて450万円の車両運搬具を計上し、小切手で支払った、すなわち当座預金の減少の仕訳を切ります。

練習問題17-2について、減価償却費を計算すると

残存価額: 450万円×10%=45万円
償却できる部分:450万円-45万円=405万円
毎年の償却額:405万円÷5年=81万円

となります。よって減価償却費を81万円計上し、同額、車両運搬具を減少させます。

ちなみに、減価償却費の計算ですが、電卓を打つときに、上のように一つずつ計算しなくても、残存価額が10%ならば、償却できる部分は90%であることがわかるため、

450万円×90%÷5年=81万円

と打てば、一回で計算できます。

以下、本問のBS、PLです。参考にして下さい。

練習問題17-1の仕訳を反映させたBS



練習問題17-2の仕訳を反映させたPL



練習問題17-2の仕訳を反映させたBS


今回は以上です。
以下、今回の要点です。

・会社で長期間にわたり使用する資産を「固定資産」という
・固定資産の価値減少を反映させるため、費用を計上することを「減価償却」という
・「取得原価÷耐用年数」が毎期の減価償却費の金額
・償却できない「残存価額」がある場合は、「(取得原価-残存価額)÷耐用年数」となる
・直接法による減価償却は、貸方に固定資産を記入する。(固定資産を減少させる)


新たに出てきた用語が多く、用語に慣れる必要がありますが、もし言葉の意味を忘れてしまっても、「残存価額」と「直接法」以外は字を見ればわかると思います。なので、残存価額と直接法の意味と処理方法だけはしっかりと覚えて頂きたいと思います。

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【第16回】有価証券(2) 「公社債」

じっくり簿記 3級
【第16回】有価証券(2) 「公社債」




こんにちは、たいちろうです。

有価証券とは、株式国債社債のことを指します。
前回は株式について説明しましたが、今回は国債社債の処理を説明します。

公社債の処理
国債、社債(併せて公社債と呼びます)の処理は基本的に株式の処理と同じになりますが、大きく異なる点が2つあります。


<1>株式の配当は「受取配当金」であるのに対し、公社債の利息は「有価証券利息」という科目を使用します。
(ただし、「受取利息配当金」という二つを合わせたような科目が使われることもあります)

<2>公社債は「○年後に○円もらえる」ということが明記されており、その金額を「額面」といいます。
そして、公社債の購入について「額面100万円の社債を額面10万円あたり9万円で購入した」という表現がされます。
よって、何口(公社債の単位は「口」)購入したのかを知るために、総額を単価で割る必要があります。

すなわち上記の例だと、
100万円(総額)÷10万円(額面の単価)=10口
ということで、10口購入したということがわかります。

また、取得原価は、9万円×10口=90万円になります。
「9万円で購入した」とあるので、9万円が取得の単価です。

10万円はあくまで「額面」であって、実際に購入した際に払った対価ではありません。
「額面」に惑わされないように注意してください。

上記2点(<1>有価証券利息という科目、<2>「口」「額面」の表現)を覚えれば、株式であっても、公社債であっても仕訳を切れるようになります。



例題16-1 額面10万円のA社社債を額面1,000円あたり600円で購入し、手数料1万円とともに現金で支払った。
また、額面20万円のB社社債を額面1,000円あたり800円で購入し、手数料1万円とともに現金で支払った。



例題16-1 解答 (借方)売買目的有価証券  7/ (貸方) 現金 24 (単位:万円)
売買目的有価証券 17/



まず、社債を何口購入したかを計算します。

・A社社債
額面(総額)10万円÷額面(単価)1,000円=100口

 よって、100口購入したことがわかります。

そして、実際の購入代価は100口×600円=6万円になります。
さらに、付随費用1万円を合わせて、7万円が当該社債の取得原価になります。

・B社社債
額面(総額)20万円÷額面(単価)1,000円=200口

 実際の購入代価は200口×800円=16万円
付随費用1万円を合わせて、17万円が当該社債の取得原価になります。

ちなみに仕訳の形式としては

(借方)売買目的有価証券  7/ (貸方) 現金 7 (単位:万円)
  売買目的有価証券 17/      現金 17

もしくは、

(借方)売買目的有価証券  24/ (貸方) 現金 24 (単位:万円)

となります。

実際の簿記検定では、問題文に仕訳の切り方に指定があったり、解答欄のスペースの大きさ次第だったりするので、臨機応変に仕訳を切ってください。


以下、本問のBSです。本問の仕訳はPLに影響が無いので省略します。
(最初に現金が24万円あったと仮定しています)




解答の仕訳を切る前のBS




解答の仕訳を切った後のBS



(A社の社債とB社の社債を合算して表示しています)



例題16-2 A社社債およびB社社債の利息の支払日が到来し、合計で5万円の利息を現金で受け取った。


例題16-2 解答 (借方)現金 5 / (貸方) 有価証券利息 5 (単位:万円)



株式の処理と異なる点の一つ、「公社債は(配当ではなく)利息」ということです。
よって、科目も「有価証券利息」を使用します。

検定試験の問題において、ひっかけの選択肢として「受取配当金」があることもありえるので、注意して下さい。


以下、本問の仕訳を反映させたPLとBSです。(例題16-1から続いていると仮定)

                   PL




BS




例題16-3 保有しているA社社債(額面総額10万円、取得原価7万円)を、額面1,000円につき900円で売却し、代金を現金で受け取った。


例題16-3 解答 (借方)現金 9 / (貸方) 売買目的有価証券 7 (単位:万円)
          / 有価証券売却益  2



まず、対価として受け取る現金の金額を計算します。

10万円÷1,000円=100口 が購入する口数であるため、

100口×900円=9万円

を現金で受け取ることになります。

売却した(減少する)社債の取得原価7万円分について、売買目的有価証券を貸方に記入します。
そして、借方と貸方の差額1万円(貸方)を売却益として計上します。

前回解説したように、貸方に出る場合は収益、すなわち売却益です。

以下、本問の仕訳を反映させたPLとBSです。(例題16-2から続いていると仮定)
                   
PL



BS




例題16-4 保有しているB社社債(額面総額20万円、取得原価17万円)を、額面1,000円につき700円で売却し、代金を現金で受け取った。


例題16-4 解答 (借方)     現金 14 / (貸方) 売買目的有価証券 17 (単位:万円)
         有価証券売却損 3 /


例題16-3と同様に、対価として受け取る現金の金額を計算します。
売却した社債の数は、

20万円÷1,000円=200口 であり、

200口×700円=14万円

を現金で受け取ることになります。よって、借方に現金14万円を記入します。

売却により、社債が減少するので、貸方に売買目的有価証券を17万円(取得原価)を記入します。

最後に、貸借差額の3万円(借方)を売却損として計上します。借方なので、費用すなわち売却損になります。

以下、本問の仕訳を反映させたPLとBSです。(例題16-3から続いていると仮定)

PL




BS



当初24万円だった現金が、一連の有価証券の売買取引を通じて、最終的に28万円になっています。
この増加した4万円が、すなわち利益の4万円となります。財政状態(BS)と経営成績(PL)は、リンクしていることがわかると思います。


今回の要点は以下の通りです。

・公社債の利息は「有価証券利息」という科目を使用
・公社債の購入時「額面100万円の社債を額面10万円あたり9万円で購入した」という表現がされる。よって、何口購入したのかを知るために、総額を単価で割る必要がある。
・口数×購入した金額(単価)=公社債の購入代価。ここに、さらに付随費用を足すことで取得原価となる。


これを抑えていれば、他は株式の処理と同じです。

【参考】電卓のメモリー機能の使い方
公社債は、購入した口数を自分で計算しなければならないため、株式と比べて、手順が少しだけやっかいです。


計算が多い場合は、電卓の「メモリー」機能を使用すると、便利です。

電卓の「M+」「M-」「MR」というボタンがメモリー機能のボタンです。

・「M+」は「メモリープラス」⇒表示されている数字を電卓の記憶にプラスさせる。
・「M-」は「メモリーマイナス」⇒表示されている数字を電卓の記憶からマイナスさせる。
・「MR」⇒メモリーに記憶させた金額の合計が表示される。

例えば、

5  → M+  

と打つと、「5」が電卓の記憶(メモリー)に記録されます

もし、このとき表示されている「5」を消してしまっても、「MR」(機種によっては「RM」)を押すと、再び記憶している「5」を呼び出すことができます。

そこで、さらに 

100 →M+

と打つと、先にメモリーに記憶させていた5に100が足されて、105を記憶した状態になります。
(「MR」を押すと105が表示されます)

先程と同様に、このとき表示されている「105」を消してしまっても、「MR」(機種によっては「MR」)を押すと、再び記憶している「105」を呼び出すことができます。


また、そこから

10 → M-

と打つと、メモリーされている105から10がマイナスされて、メモリーの金額は95になります
(MRで95を表示できるのも同様)

このように足し算、引き算をしながらメモリーに記憶させることができます。
これにより、紙にメモをとる回数を圧倒的に少なくすることができます。

例題16-1を例にとってみます。


例題16-1 額面10万円のA社社債を額面1,000円あたり600円で購入し、手数料1万円とともに現金で支払った。
また、額面20万円のB社社債を額面1,000円あたり800円で購入し、手数料1万円とともに現金で支払った。


たとえば、ここで計上される「売買目的有価証券の合計金額」が知りたい場合、

まずA社社債について、

額面(総額)100,000円÷額面(単価)1,000円=100口

(「100」を画面に表示させたまま) 100口×600円=60,000円(A社社債の購入代価)

ここまでは、単純に電卓を叩くだけですが、ここで計算結果の「60,000」について「M+」を押して、メモリーさせます
そして一旦、「AC」(機種によっては「C」)で画面を消します。


そして、付随費用1万円を足すため、

10,000 → 「M+」

と押します。
ここで「MR」を押せば、「70,000」(A社社債の取得原価)が表示されます


次に、B社社債について、(一旦ACで画面表示を消して)

額面(総額)200,000円÷額面(単価)1,000円=200口
 (「200」を画面に表示させたまま)200口×800円=160,000円

を電卓で計算します。

画面に「160,000」と表示されていると思いますが、ここで「M+」を押します

さらに、付随費用1万円を足すため、

10,000 → 「M+」

と押します。

ここで、メモリーに今まで足した金額を見る(「MR」を押す)と
「240,000」すなわち、A社社債とB社社債の取得原価の合計が表示されます


これで一連の計算を、紙でメモを取らずに電卓だけで答えが出せました。

電卓のメモリー機能を使えるのと使えないのでは、試験本番の時の問題を解くスピードが違います。
できる限り、メモリー機能の使い方に慣れておいて頂きたいと思います。


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【第15回】有価証券(1) 「株式」

じっくり簿記 3級
【第15回】有価証券(1) 「株式」




こんにちは、たいちろうです。

前回までで「現金関連」と「商品売買」という簿記の基本的な仕訳の学習が終わりました。

・現金、当座預金
・売上と仕入
・売掛金と買掛金
・受取手形と支払手形

などの基本的な科目は、
取引の中心となる科目であり、簿記検定でも必ず出題されるので、安定して得点できるようしっかり理解して頂きたいと思います。


今後は「有価証券」「減価償却」など、商品売買以外で簿記検定で頻出の論点を学習していきます。

これらをしっかり理解することで、まんべんなく点数を稼ぐことができるようになります。


有価証券とは
有価証券とは、端的に言うと、株式国債社債のことを指します。

これらを購入したとき、及び売却したときの処理を見ていきます。

簿記3級では「売買目的有価証券」しか出てきません。
(2級以上では有価証券には複数の種類があります)

売買目的有価証券とは、その名の通り、売買する目的で持っている有価証券です。
すなわち、安く買って高く売ることを目的としているものです。
(ある会社の株式を100万円で購入し150万円で売却する、など)

売買目的有価証券には「株式」や「国債、社債(併せて「公社債」)」があります。
今回は、売買目的有価証券の中の「株式」について解説いたします。


売買目的有価証券の処理
売買目的有価証券は資産です。増加したら借方に、減少したら貸方に記入します。


売買目的有価証券の増加の仕訳
(借方) 売買目的有価証券 ×× / (貸方)・・・・

売買目的有価証券の減少の仕訳
(借方)・・・・/(貸方)売買目的有価証券 ××



また、有価証券の取得の際に、証券会社の手数料などの諸費用(=付随費用)が発生します。
付随費用がある場合は、売買目的有価証券にプラスすることになります。
(ちなみに、有価証券そのものの購入代価と付随費用を合わせて、取得原価と呼びます)

購入代価+付随費用=取得原価


例題15-1 A社株式100株を1株当たり2,000円で購入し、手数料2万円とともに現金で支払った。


例題15-1 解答 (借方)売買目的有価証券 22 / (貸方) 現金 22 (単位:万円)



1株2,000円の株式を100株購入した、ということなので、

2,000円×100=200,000円

が株式の購入代価です。

さらに付随費用2万円を足して、22万円が取得原価となります。

本問のBSは以下の通りです。(最初に現金が22万円あったと仮定しています)

解答の仕訳を切る前のBS



解答の仕訳を切った後のBS



現金が22万円減少し、売買目的有価証券が22万円増加しています。


配当を受け取ったとき
株式を保有していると、配当を受け取ることができます。

配当は「配当金領収書」という書類で受け取り、それを銀行に持ち込むことで現金化します。
これは第5回講座の「簿記上の現金とは」という節で解説した通り、配当金領収書を受け取った時点で現金として認識してよいことになります。

実際には、証券口座(株式の売買用の口座)に直接入金されるか、指定の銀行口座に振り込んでもらうことが多いと思われますが、簿記3級では配当金領収書で受け取るケースで出題されます。



配当金は「受取配当金」という収益の科目で計上します。
収益なので、発生したら仕訳の貸方に記入します。


受取配当金の発生の仕訳
(借方)・・・・ /(貸方)受取配当金 ××




例題15-2 A社株式の配当として、3万円の配当金領収書を受け取った。


例題15-2 解答 (借方)現金 3 / (貸方) 受取配当金 3 (単位:万円)


配当金の受け取りは収益なので、貸方に「受取配当金」を計上します。

また、配当金領収書は現金と同じ扱い(第5回参照)なので、現金の増加と認識します。(借方に現金を計上)

以下、本問のPL,BSです。(BSは例題15-1から続いていると仮定しています)
           
PL



受取配当金3万円が収益として計上されています。

BS



BSは現金3万円が増加しています。


有価証券を売却したとき
売買目的で保有している株は、いつかは売却します。
売却した際は、売買目的有価証券の減少の仕訳(貸方に売買目的有価証券)となります。

また、買った時より高く売れれば売却益が発生し、買ったときより低く売れたら売却損が発生します。

実際に仕訳にするときはそれぞれ、

有価証券売却益」(収益)
有価証券売却損」(費用)

という科目で計上することになります。

有価証券売却益の発生の仕訳
(借方)・・・・ /(貸方)有価証券売却益 ××


有価証券売却益は収益の科目なので、発生したら貸方に記入します。


有価証券売却損の発生の仕訳
(借方)有価証券売却損 ××/(貸方) ・・・・ 


有価証券売却損は費用の科目なので、発生したら借方に記入します。



例題15-3 100株につき22万円(付随費用込)で購入したA社株式のうち50株を、1株あたり3,000円で売却し、代金を現金で受け取った。


例題15-3  解答 (借方)現金 15 / (貸方)  売買目的有価証券  11           (単位:万円)
          / 有価証券売却益   4



1株3,000円で50株売却した、ということなので、3,000円×50=150,000円の現金が増加します(借方)。

一方で、売買目的有価証券を減少させるの仕訳(貸方に売買目的有価証券)を切ります。

22万円で100株保有している内の50株を売却したので、

(22万円÷100株)×50株=11万円

が減少する売買目的有価証券の金額となります。

上記のように1株あたりの単価を計算して、売却した数だけ売買目的有価証券を減少させることになります。


15万円で売却しているのに対して、減少する有価証券は11万円分です。
すなわち、取得原価11万円の有価証券を15万円で売却した、ということであり、
差額の4万円分利益が出ていることになります。これが売却益です。

よって、有価証券売却益4万円を貸方に計上します。

         (借方)現金 15 / (貸方)  売買目的有価証券  11           
          / 有価証券売却益   4



仕訳は借方と貸方の合計が必ず一致するので、仕訳の金額が不一致の場合、その差額は売却益もしくは売却損になるります。

それが売却益なのか売却損なのかは、PLの費用(借方)と収益(貸方)がどちらにあるかを考えれば簡単に判断できます。

すなわち本問のように、貸方に金額が入るのであれば収益(売却益)ですし、逆に借方に金額が入るのであれば費用(売却損)になります。

以下、本問のPL、BSを記載します。(例題15-2から続いていると仮定しています)

有価証券売却益は収益なので、PLに記載されます。





解答の仕訳を切る前のBS



例題15-2の解答のBSです。
現金が3万円と売買目的有価証券が22万円分あります。

解答の仕訳を切った後のBS



本問の仕訳を反映させると、現金は3万円+15万円=18万円となり、一方で有価証券は22万円-11万円=11万円となります。



例題15-4 100株につき22万円(付随費用込)で購入したA社株式のうち50株を、1株あたり1,200円で売却し、代金を現金で受け取った。


例題15-4  解答 (借方)現金          6 / (貸方)売買目的有価証券  11   (単位:万円)
有価証券売却損 5 /



1株1,200円で50株売却した、ということなので、1,200円×50=60,000円の現金が増加します(借方)。

例題15-3と同様に、保有している有価証券を売却しているので、売買目的有価証券の減少の仕訳(貸方に売買目的有価証券)となります。

減少する金額も同じく、22万円で100株保有している内の50株を売却したので、

22万円÷100×50=11万円

となります。

しかし、本問では、11万円で取得した有価証券を6万円で売却していることになります。

すなわち、5万円の損失が発生していることになります。
すなわち売却損であるため、有価証券売却損5万円を借方に計上します。

以下、本問のPL,BSを記載します。(例題15-3から続いていると仮定しています)


           
解答の仕訳を切る前のPL





例題15-3の解答のPLをそのまま記載しています。受取配当金と売却益が発生していることがわかります。

解答の仕訳を切った後のBS




借方に有価証券売却損5万円が計上されています。もし仮に、取引がこれで全てだとすると、この会社の利益は、配当金3万円+売却益4万円-売却損5万円=2万円となります。


解答の仕訳を切る前のBS




例題15-3の解答のBSです。現金が18万円と売買目的有価証券が11万円分あります。

解答の仕訳を切った後のBS




現金が6万円増加し、有価証券が11万円減少しています。


以下、練習問題となりますが、例題の数字を変えただけなので、解説は特にいたしません。
もし、仕訳がわからなくなったらPL,BSを書いてみることをお勧めします。

現金や有価証券が増えたらBSの資産が増えるはずだから仕訳の借方に記入する、というように、連想できるようになります。


練習問題15-1 A社株式100株を1株当たり5,000円で購入し、手数料4万円とともに現金で支払った。
練習問題15-2 A社株式の配当として、10万円の配当金領収書を受け取った。

練習問題15-3 100株につき54万円(付随費用込)で購入したA社株式のうち50株を、1株あたり8,000円で売却し、代金を現金で受け取った。

練習問題15-4 100株につき54万円(付随費用込)で購入したA社株式のうち50株を、1株あたり4,000円で売却し、代金を現金で受け取った。



練習問題15-1 解答 (借方)売買目的有価証券 54 / (貸方) 現金 54 (単位:万円)

練習問題15-2 解答 (借方)現金 10 / (貸方) 受取配当金 10 (単位:万円)

練習問題15-3  解答 (借方)現金 40   /  (貸方)  売買目的有価証券  27    (単位:万円)
           / 有価証券売却益  13


練習問題15-4  解答 (借方)現金          20 / (貸方)売買目的有価証券  27 (単位:万円)
有価証券売却損 7 /



今回は以上となります。
今回の要点は以下の通りです。

・株式を購入したら「売買目的有価証券」(資産)で計上。資産なので仕訳の借方に記入。
・付随費用も「売買目的有価証券」に含める。
・配当を受け取ったら「受取配当金」(収益)で計上。収益なので仕訳の貸方に記入。
・売却したら「売買目的有価証券」を減少させる(貸方に記入)。売却代金と取得原価に差があったら、「有価証券売却損」(費用)又は「有価証券売却益」(収益)で計上。



次回はもう一つの有価証券である、「公社債」を説明いたします。
処理はほとんど同じなのですが、株式とは少し出題のされ方が異なるので、慣れが必要になります。


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【第14回】商品売買(6) 「手形の割引」

じっくり簿記 3級
【第14回】 商品売買(6) 「手形の割引」



こんにちは、たいちろうです。

今回は、手形を期日よりも早く現金化したいとき、すなわち「手形の割引」の処理を説明いたします。


手形の割引とは
手形には「支払日」(満期)が明記されています。
手形は支払日が到来するまで現金にすることができません。(通常3ヶ月程度かかります)

 売上の対価として手形を受け取ったが、資金繰りが苦しく、どうにかしてその手形を早く現金に替えたい、という状況もあると思います。
そんな場合は、手形を銀行等に買い取ってもらうことができます。

手形を銀行に買い取ってもらう場合、手形に記載されている金額のすべてを受け取ることはできず、銀行等の手数料としてある程度の金額が引かれて(割引されて)支払われることになります。

このように、期日より早く現金化するため、銀行等に買い取ってもらうことを「手形の割引」と言います。

また、その際にかかる買取手数料を「割引料」といいます。


手形の割引の処理
手形の割引は手形を買い取ってもらうということであるため、受取手形の減少になります。

また、その際に買取の手数料である「割引料」は「手形売却損」という費用科目になります。
科目の名称の通り、手形を売却する際に生じる損失、ということです。

そして受取手形の額面の金額から、割引料(手形売却損)を差し引いた金額を現金や預金として受け取ることになります。


手形の割引の仕訳
(借方) ・・・・ / (貸方)受取手形 ××

割引料が発生した際の仕訳
(借方) 手形売却損 ×× / (貸方)・・・・


手形売却損は費用の科目であるため、増加したら借方に記入します。



例題14-1 売上の対価として受け取った約束手形15万円を銀行に割り引いてもらった。その際、割引料1万円が差し引かれ、残額が当座預金口座に振り込まれた。


例題14-1 解答 (借方)当座預金  14 / (貸方) 受取手形 15
手形売却損  1/                (単位:万円)



手形を割り引きした、すなわち手形を買い取ってもらったので、手形が減少することにな
ります。
よって、受取手形の減少、貸方に受取手形を記入します。

そして、割引料は「手形売却損」という科目で借方に計上します。

手形の額面15万円から、割引料1万円を差し引いた残額14万円が当座預金に入金された、ということなので、当座預金を14万円増加させる仕訳(借方に当座預金)となります。

以下、本問のBSとPLの動きです。


             
解答の仕訳を切る前のBS


受取手形が15万円ある、という状況です。

              
解答の仕訳を切った後のBS





受取手形が15万円減少し、当座預金が14万円増加しています。


             
解答の仕訳を切った後のPL



また、PLは、手形売却損(費用)が1万円発生しています。

BS、PLの推移を見れば、15万円あった受取手形(資産)が、14万円の当座預金(資産)と1万円の手形売却損(費用)に振り替わっている、という仕訳の状況がわかると思います。



練習問題14-1 所有している約束手形20万円を割り引き、割引料1万円が差し引いた残額が当座預金口座に振り込まれた。


練習問題14-1  解答 (借方)当座預金   19/ (貸方)  受取手形  20           
           手形売却損  1/              (単位:万円)
   


例題14-1と全く同じ状況で、金額が異なるだけなので、解説やBS,PLの表示は省略いたします。



手形に関する解説は以上となります。

手形の論点としては、この他に、

・「自己受為替手形」
・「自己宛為替手形」

がありますが、これらはどちらかというと簿記2級で出題される論点で、仮に簿記3級で出題されたとしても、解ける方は少ないと思います。

一応簿記3級の範囲ではあるのでとりあえず解説はしますが、難しいと思ったら飛ばして問題ありません。

資格試験で重要なことは、よく出る論点を重点的に覚える、ということであり、あまり出ない難問をがんばって覚えても点数には結びつきませんので、以下は余裕があったら覚えて下さい



自己受為替手形
自己受為替手形の概念を解説する前に、第13回の講座で解説した、通常の為替手形の取引の図を再掲します。




このように、為替手形は、振出人が名宛人に対して、指図人にお金を払ってもらうように依頼する手形でした。

「自己受為替手形」とは、自分が為替手形を振り出す際に、自分を指図人にする場合を指します。
以下の図を参照下さい。





振出人と指図人が自社になっています。
つまり、A社に対して、自社にお金を払ってもらうように依頼しているのです。

なぜこんなことをするかというと、売上債権の形として、売掛金という「ツケ」のような法律的に不安定なものよりも、しっかりと支払期日が定まっていて支払の責任も重い「手形」が欲しい、という場合に用いられるそうです。
(しかし、実際には売掛金の回収として約束手形を受け取れば同じことになるので、ほぼ用いられない方法とのことです)


例題14-2 自社は、A社に対する売掛金15万円を回収するため、指図人を自社とする為替手形を振り出し、A社の引受を得た。


例題14-2 解答 (借方)受取手形 15 /(貸方) 売掛金 15 (単位:万円)


売掛金を無くす代わりに、A社からお金を受け取れる為替手形を入手(自分で振り出したものですが)したので、受取手形を増加させています。

この仕訳は、結局、売掛金の回収として約束手形を受け取った場合とまったく同じになります。
(第12回の練習問題4を参照)


自己宛為替手形
自己宛(あて)為替手形について、以下の図を参照下さい。




今度は、自分が支払う人(名宛人)になるように手形を振り出しています。
すなわち、自分に対して支払ってくれという依頼をしていることになります。

なぜ、こんなことをするかというと、自社が本店/支店に分かれている場合を想定する必要があります。

本店や支店は「会社」という単位で見れば同じ会社ですが、物理的に別の場所にある、別のお店です。

すなわち、それぞれのお店に責任者がいて、お店の収支や資金を管理しています。
なので、資金繰りの事情で、本店が支店にお金を払ってもらいたいときなど、名宛人を支店にして手形を振り出すのです。

以下の図を参照下さい。




ちなみに、本店や支店の処理は、簿記2級の範囲です。よって、自己宛為替手形が出るとしたら2級なのではないかと思います。

会計処理としては、自社が持っている買掛金を支払手形に変えるという処理になります。


例題14-3 自社(本店)は、B社に対する買掛金10万円を支払うため、名宛人を自社(支店)とする為替手形を振り出し、自社支店の引受を得た。


例題14-3 解答 (借方)買掛金 10 /(貸方) 支払手形 10 (単位:万円)


B社に対する買掛金を手形に変えた、という取引なので、買掛金を減少させ、支払手形を増加させています。
これも買掛金の支払の際に約束手形を振り出した場合と全く同じ処理になります。(第12回の練習問題3を参照)



以上、商品売買に関わる処理を終わりにしたいと思います。
今回の要点は以下の通りです。

・期日より早く現金化するため、銀行に買い取ってもらうことを「手形の割引」と言う。
・割引料(割引の手数料)は「手形売却損」という費用になる。
・受取手形が減少(貸方)し、手形売却損(借方)が発生。差額は現金や預金になる(借方)。

仕訳のパターンは以下の通り
(借方)当座預金  19/ (貸方) 受取手形 20
   手形売却損  1/



売上、仕入という利益を生み出すための取引や、売掛金、買掛金、受取手形、支払手形などの現金回収/支払のための取引の基本を理解して下さい。

これらは、簿記のあらゆる場面で必要になる根本的な知識です。

一方で、値引きや返品、諸掛や手形の割引などは、簿記検定の第1問(仕訳を書かせる問題)で単発で出題されることが多い論点です。

こういった細かい論点は試験直前にざっと見直しておくと、点数につながると思います。

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【第13回】商品売買(5) 「為替手形」

じっくり簿記 3級
【第13回】 商品売買(5) 「為替手形」



こんにちは、たいちろうです。

前回、約束手形と、裏書譲渡について説明しました。

今回はもう一つの手形、「為替手形」について説明します。
為替手形の概念は1回で覚えるのは難しいかもしれません。2回、3回と読み返してしっかりと覚える必要があります。


為替手形とは
約束手形は、「手形を発行した人(振出人)が、手形を受け取った人(名宛人)にお金を支払う」という手形でした。

よって、約束手形を振り出した人はお金を支払うことになるし、受け取った人はお金を受け取ることができます。つまり、約束手形は必ず「自分」と「相手」の2者の間で現金や預金の授受が起こります
(裏書譲渡の場合でも、お金を払う側と受け取る側の2者しかいません)


しかし、為替手形は登場人物が2者ではなく、3者いることが特徴となります。

為替手形は「手形を発行した人(振出人)が、手形を受け取った人 (名宛人)に対して、指定の人に (指図人)にお金を払うように依頼する」という手形です。

すなわち、為替手形を発行する人は「○○さんにお金を支払って下さい」と、手形を受け取った人に指示するというのもです。(為替手形を発行する人は、支払を指示するだけで自分はお金を払いません)


例えば、自社が得意先(売上の相手先)であるA社に対して10万円の売掛金を持っており、一方で仕入先(仕入の相手先)のB社に対して10万円の買掛金を負っているとします。

この場合、通常は

・A社から10万円を回収する。
・B社に10万円を支払う

というように別々に決済を行います。





そこで、A社がB社に対して直接10万円を支払えば、一回で決済が終わります。
そこに着目し、A社に対して、お金をB社に支払うように依頼するもの、それが為替手形となります。




 ここでわかるように、約束手形は2者しか登場しないのに対し、為替手形は3者が関係してきます。

また、約束手形の「名宛人」はお金を受け取る人であるのに対し、為替手形の「名宛人」はお金を支払う人となっています。

名宛とは、「○○さん宛」とすることであり。郵便の宛名と同じものです。
よって、約束手形の宛名に書かれた人は、お金を受け取る人であるのに対して、為替手形の宛名に名前を書かれると、「○○さんにお金を払ってください」という指示を受けることになってしまうのです。

同じ言葉でも、約束手形と為替手形で意味が違うため、「振出人」とか、「名宛人」という言葉を「お金を支払う人」「お金を受け取る人」とに覚えないほうがよいと思われます。


為替手形は、手形を受け取った人に「お金を他の誰かに支払ってください」と依頼する手形であるため、振出人は「手形を発行した人」名宛人は「手形を受け取った人(手形の宛名に書かれた人)」と覚えれば、その宛名に名前を書かれる(=名宛人になる)ということはお金を支払わなくてはならないということが連想できると思います。

また、為替手形における、お金を支払う人すなわち名宛人を「支払人」または「引受人」、お金を受け取る人すなわち指図人を「受取人」と呼ぶこともあるそうです。


為替手形の「名宛人」「指図人」の処理
為替手形は「振出人」「名宛人」「指図人」の3者がおり、それぞれ処理が異なります。

しかし、実は自社が「名宛人」又は「指図人」の場合は、前回解説した、約束手形の処理と全く同じ処理になるのです。



例題13-1 自社はA社から商品10万円を仕入れたが、代金としてA社振出、B社受取の為替手形の引受を依頼されたため、引き受けた。

例題13-2 自社はC社に商品15万円分を売り上げたが、代金としてC社振出、D社引受の為替手形を受け取った。



例題13-1 解答 (借方)仕入 10 / (貸方) 支払手形 10 (単位:万円)
例題13-2 解答 (借方)受取手形 15 / (貸方) 売上 15 (単位:万円)



例題13-1は自社がお金を支払う人、つまり名宛人になったケース(「引き受けた」とは、手形の代金を支払うことを引き受けたということ。すなわち「名宛人」となる)であり、例題13-2は自社がお金を受け取る人、つまり指図人になったケースです。

○社振出、○社引受、などと問題文に書かれていて一瞬戸惑いますが、無視して問題ありません

結局は、仕入れの代金として支払をする手形を発行した、ということと、売上の代金としてお金をもらえる手形を受け取った、ということなので、約束手形と同様に、支払手形、受取手形を計上増加させることになります。

為替手形の問題では、自社が為替手形を振り出した場合でなければ、約束手形と同じ仕訳になるということを覚えておけば、混乱せずに済むと思われます。


ちなみに、本問は前回(第12回)の例題12-1,12-2と全く同じ解答になります。
前回の例題12-1,12-2を再掲いたしますので、約束手形の仕訳と同じであることを確認してください。


例題12-1 商品10万円を仕入れ、代金として約束手形を振り出した。
例題12-2 商品15万円分を売り上げ、代金として約束手形を受け取った。


例題12-1 解答 (借方)仕入 10 / (貸方) 支払手形 10 (単位:万円)
例題12-2 解答 (借方)受取手形 15 / (貸方) 売上 15 (単位:万円)


売上・仕入そのものだけではなく、売掛金・買掛金の回収/支払の際に為替手形を用いることもあります。


練習問題13-1 自社はA社に対して買掛金10万円を負っているが、A社より、A社振出、B社受取の為替手形の引受を依頼されたため、引き受けた。

練習問題13-2 自社はC社に対する売掛金が15万円あるが、その売掛金について、C社より、C社振出、D社引受の為替手形を受け取ることで回収した。


練習問題13-1 解答 (借方)買掛金 10 / (貸方) 支払手形 10 (単位:万円)
練習問題13-2 解答 (借方)受取手形 15 / (貸方) 売掛金 15 (単位:万円)



これも、例題13-1,13-2と同様に「自社が為替手形を振り出した」というケースではないため、単純に支払手形の増加および受取手形の増加の仕訳になります。

練習問題13-1はA社に対する買掛金がB社に対する支払手形に変わっただけ、練習問題13-2はC社に対する売掛金がD社に対する受取手形に変わっただけです。

本問のBSは以下のようになります。

             解答の仕訳を反映させる前のBS






解答の仕訳を反映させた後のBS



ちなみにこれは前回(第12回)の練習問題12-3,12-4との問題と全く同じ解答となります。
参考に、前回の練習問題12-3,12-4を再掲いたしますので、約束手形の処理と同じことを確認して下さい。



練習問題12-3 買掛金10万円を支払うため、約束手形を振り出した。
練習問題12-4 売掛金15万円の回収において、約束手形を受け取った。


練習問題12-3 解答 (借方)買掛金  10 / (貸方) 支払手形 10 (単位:万円)
練習問題12-4 解答 (借方)受取手形  15 / (貸方) 売掛金 15 (単位:万円)



為替手形の「振出人」の処理
為替手形の処理のうち、自社が「名宛人」(お金を支払う人)になる場合と、「指図人」(お金を受け取る人)になる場合は約束手形の処理と同じになるということを解説してきました。

以下で説明する、自社が為替手形の「振出人」となる場合、為替手形特有の処理になります。


まず、自社が為替手形の振出人である場合の仕訳は以下のようになります。


(借方)買掛金  / (貸方) 売掛金

売掛金と買掛金が両方とも減少します。

冒頭で使用した、為替手形の説明の図を再掲します。為替手形というのは、売掛金と買掛金を両方持っているときに、(下図)





その代金を、売掛金がある会社から、買掛金を負っている会社に直接支払ってもらうように依頼する手形です。(下図)




すなわち、売掛金と買掛金を相殺する取引なのです。
(=自分は買掛金を支払わなくて済むようになるかわりに、売掛金も受け取れなくなる)


よって、売掛金と買掛金の相殺の仕訳、すなわち、売掛金と買掛金の両方が減少する仕訳になります。

自社が為替手形を振り出した際はこのパターンの仕訳しかないので、ここは暗記してください。

「自社が為替手形を振り出した」という文言=(借方)買掛金 / (貸方)売掛金 となります。



練習問題 13-3 自社はA社に対する買掛金10万円を支払うため、B社(売掛金が10万円ある)を名宛人とする為替手形を、B社の引受を得て、振り出した。


練習問題13-3 解答 (借方)買掛金  10 / (貸方) 売掛金 10 (単位:万円)



「自社が(中略)為替手形を振り出した」と問題文に記載されているため、買掛金と売掛金を相殺する仕訳を切ることになります。

以下、練習問題13-3のBSになります。(前提として、もともと買掛金と売掛金が10万円ずつあったとしています)

解答の仕訳を切る前のBS






解答の仕訳を切った後のBS




為替手形を振り出したことにより、売掛金と買掛金がそれぞれ10万円ずつ減少しています。


簿記検定の為替手形の論点として、この自社が為替手形を振り出す際の仕訳が出やすいと思われますので、ここはしっかりと覚えて頂きたいと思います。


為替手形が決済された時
自社が為替手形の「名宛人」「指図人」の場合は、約束手形と同じように「支払手形」「受取手形」で処理するので、支払時/入金時も約束手形と全く同じ仕訳になります。

支払手形の支払時
(借方) 支払手形 /  (貸方) 現金or預金

受取手形の入金時
(借方) 現金or預金 /(貸方) 受取手形



では、自社が「振出人」の場合の為替手形が決済されたとき、どのように仕訳を切ればよいでしょうか。

正解は「仕訳なし」です。つまり、仕訳を切る必要がありません。


お金を支払うのも、受け取るのも、自社ではありません。
また、手形が決済されたからといって、自社の売掛金や買掛金に影響はありません。

よって為替手形の振出す場合の処理は、買掛金と売掛金の相殺の仕訳を切るだけで完了となります。


今回は以上となります。
初めて見ると理解しづらい為替手形ですが、仕訳自体は簡単なものばかりです。
今回の要点をまとめると、以下のようになります。


・為替手形は、「手形を発行した人(振出人)が、手形を受け取った人 (名宛人)に対して、指定の人に (指図人)にお金を払うように依頼する」という手形

・名宛人の場合は支払手形、指図人の場合は受取手形として仕訳を切る。(約束手形と全く同じ仕訳)

・振出人の場合は、売掛金と買掛金の相殺の処理、すなわち (借方) 買掛金 / (貸方) 売掛金 となる。


次回、「手形の割引」を解説し、商品売買の説明は終了になります。

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